BIMで建築確認申請|2025・2026年の導入ポイントと義務化、提出物・手順について

2025.5.20

2029年に予定されているBIMデータによる建築確認申請開始に先立ち、2025年・2026年と段階的に制度が部分的に導入されます。

※2025年5月現在

そこで今回は、BIMを活用した建築確認申請について、概要から義務化されるまでのロードマップ、メリット・デメリット、具体的な提出物と方法まで詳しく解説します。

「これからBIMを業務に導入する」という方におすすめのサービスも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

コラムのポイント
● BIMによる建築確認申請は2025年より段階的に進められ、本格始動は2029年を予定されています。

● BIMによる建築確認申請によって、申請者・審査者どちらにも業務の効率化という大きなメリットがもたらされます。

● BIMを使用した業務にはメリットだけではなくデメリットもあるため、まずはプロにBIMモデル作成を外注する方法もおすすめです。

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BIMの建築確認申請とは|国土交通省の狙い

BIMは単一ソリューションではない|各BIMソフトの主要機能と拡張性について

BIMとはBuilding Information Modeling(ビルディング インフォメーション モデリング)の略称で、建築士・施工者・建築主で同じ情報を共有できる「情報マネジメントシステム」です。

これまでの建築確認では紙ベースの資料を基に審査していましたが、2025年の建築基準法改正によって審査対象となる建物が増え、人材不足や従事者の高齢化によってさらに審査期間が長くなると危惧されていました。

▶︎おすすめコラム:「2025年改正建築基準法|重要ポイントをわかりやすく解説、懸念点解決策も

そこで国土交通省は建設・建築業界における2025年問題※などの対策として、BIMの活用による作業効率化を推し進めています。

※2025年問題:日本の少子高齢化により、2025年には建設業において熟練した技術をもつ従事者が大量退職し、深刻な人材不足になる可能性がある問題。

その取り組みの一部が「BIMによる建築確認申請」です。

しかし、日本は諸外国と比べるとBIMの普及率は低いと言われています。

普及率と現状
日本・普及率50%程度だが、専門設計事務所の導入率は約30%、社員50人以下の企業規模では約35%程度(2022年時点)
・2023年には小規模工事以外の全ての公共事業にBIM/CIM※を原則適用
アメリカ・30%程度(2007年)から70%程度(2012年)まで上昇
シンガポール・2013年から段階的にBIMモデルでの建築確認電子申請を義務化
・2015年には普及率80%程度

※BIM/CIM(ビムシム):BIMとConstruction Information Modeling(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)の略称であるCIMを合わせ、建築分野・土木分野で使うシステムの総称。

日本ではBIMを導入する企業は増えているものの、設計・施工などそれぞれの分野で各々が個別活用しているケースが多く、これまでは建築確認申請や建物の維持管理段階まで通貫して利用されることはありませんでした。

しかし、BIMモデルを用いた電子申請が本格導入されると、申請者・審査者どちらにも業務面において大きな変化があります。

対象者申請業務の変化
申請者入出力基準に沿ってBIMソフトウェアで作成した申請図書(PDF)とBIMモデル(IFC※様式)、設計者チェックリストを電子申請にて提出できる。
審査者設計者チェックリストに基づく項目を審査することで、プランの整合性や方への適合性における確認を一部省略できる。
申請者
審査者
申請図書の提出及び指摘事項・是正点に関する質疑高等が、確認申請クラウド(CDE※)にて円滑かつ効率的に行える。

※IFC:Industry Foundation Classesの略称で、ISO 16739にて建築・建設・施設管理の分野における国際的なデータ規格。
※CDE:Common Data Environmentの略称で、建築・建設業における共通データ環境を指す。CDEによって設計・施工・製造・運用・施設管理など各段階の関係者が、設計・施工情報(二次元、三次元、その他関連情報)を円滑に共有し受け渡せる。


BIM確認申請はいつから|部分導入から義務化までのロードマップ

BIM確認申請はいつから|部分導入から義務化までのロードマップ

国土交通省はBIMの普及を推し進めており、2029年には全国で建築確認申請を完全電子化し、BIMによって作成した図面データの提出を義務化することが最終目標です。

そのゴールを達成するために、2023年から段階的に取り組みが実施されています。

義務化までのロードマップ

2023年

  • 小規模工事を除く全ての公共事業にBIM/CIMを原則適用させる。

2025年

  • 一部の地域を対象に、電子申請(デジタルデータによる建築確認申請)を開始する。
  • 設計者は審査用のPDF図面と併せて、その整合性を担保するための参考資料としてIFCデータを提出する。

2026年

  • 一部の地域から段階的に「BIM図面審査(BIMで作成した図面データによる確認申請)」を開始する。
  • IFCデータで一部の審査情報を自動表示し、PDF図面で個別に詳細な項目をチェックする。

2027年

  • 2025年に一部地域で開始された「電子申請」を全国対象に本格稼働する。

2029年

  • 「BIMデータ審査(BIMデータを直接審査)」が全国対象に本格稼働する。
ポイント
2029年には全国の地域でIFC様式の図面データを用いた建築確認審査が始まります。

その時に向けて早い段階からBIMを業務に取り入れる現場が増えており、大手デベロッパーだけではなく中小規模企業や注文住宅市場にまでBIMが浸透しつつあるのが現状です。


▶︎おすすめコラム:「BIMとは情報マネジメントのプロセスであり”資産”である

BIM図面審査とBIMデータ審査の違い

2026年には一部の地域で「BIM図面審査」が導入され、2029年には「BIMデータ審査」が全国で開始される予定です。

ここでポイントとなるのが「“BIM図面審査”と“BIMデータ審査”は異なる」という点です。

BIM図面審査

  • ルールに基づいたモデリングやデータ書き出しによって作成した「IFCデータ」を確認申請用CDEで参照しながら、2D図面(PDF)で審査を行う。
  • BIMデータから出力されたIFCデータと2D図面(PDF)の内容が整合しているかを確認し、一部の審査を省略して業務の効率化を図ることが目的。

BIMデータ審査

  • BIMデータ(IFCデータ)の一部のみを審査対象とし、各種数値計算や面積算定等の審査はソフトの機能拡張によって自動的に行う。
  • BIM図面審査よりもさらに属人性がなくなり、システムによって審査業務が高まることが期待されている。

建築確認申請における混乱を避けるため、国土交通省はBIM図面審査から導入を開始し、徐々にBIMデータ審査へ移行するロードマップを作成しています。


BIM図面審査で必要なデータと申請フロー

BIM図面審査で必要なデータ・提出物

2029年のBIMデータ審査、BIM導入の実質義務化に先立って、2026年から一部の地域で開始されるBIM図面審査に必要となるデータ(提出物)と申請フロー(手順)を紹介します。

必要なデータ(提出物)

  • 建築基準法規則第1条の3「確認申請書の様式」に規定する申請図書
  • 国土交通省の定めたBIM入出力基準に従って作成したBIMオリジナルデータから出力されたPDF形式の設計図書(建築基準法規則第1条の3に基づく図書の種類と明示事項を満たしていること)
  • IFC様式のデジタルデータ※(PDF 形式の設計図書を出力したBIMオリジナルデータと同一データから出力されたもの)
  • 設計者チェックリスト
  • 入出力基準に従ってBIMデータを作成したことについて設計者が申告する書類

※IFCデータは「IFC 2.3.0.1 Coordination View 2.0(通称 IFC2×3・アイエフシー2バイ3)」が原則。

BIM図面審査の段階では、これまでの建築確認審査と同様に、図書に明示された項目のみ審査の対象とするため、IFC データに含まれるその他の情報は、審査対象外となります。

また、一部の申請図書は、BIMソフトウェア以外で作成することも可能です。

申請フロー(手順)

①申請図書作成・申請

  • 申請に必要な図書を作成して行政所管に提出する
  • 電子申請受付システムを利用する場合は、申請情報の入力もしくはフォーマットに沿って作成したXMLデータのアップロードによる提出も可能
  • PDFデータとIFCデータは、同一のBIMオリジナルデータから同一時点で出力することが原則

②審査・仮受付

  • 行政所管は申請図書を審査し、指摘事項を明示した書面を送付する
  • 申請者は指示に沿って図書を補正する

③本受付・指摘対応

  • 審査者は必要図書及びその内容が揃っているかを確認する
  • 本受付は原則として仮受付と同一データを利用するため、PDF図書およびIFCデータの再アップロードは必要ない
  • 電子申請の場合、審査者は確認申請用CDEにてPDF形式の図書を用いて、明示事項・法令との適合性・計画の整合性を確認する
  • 行政所管は指摘事項を明示した書面を送付する
  • 電子申請の場合、審査者は指摘事項及び不備の内容について、確認申請用CDEから申請者に補正を求める

④計画の補正

  • 申請者は指摘事項に沿って計画を補正するために、BIMデータの修正・加筆、PDF形式の図書・IFCデータを再度作成する
  • 補正等への対応に関する回答と併せて再度行政所管へ提出する
  • 審査者は、確認申請用CDEにて計画の差分チェックを行い、指摘箇所以外の部分が修正されていないか確認する

⑤適合性判定

  • 審査者および適判機関は、確認申請用CDE上で審査を実施する
  • 申請者は必要に応じて更なる指摘事項に対する回答や図書の補正を行う
  • 図書を補正する場合は適宜、確認申請用CDEに最新データをアップロードする(審査者・適判機関がそれを再チェック)
  • 適判機関は、自らの補正への対応完了を確認し、申請者に連絡する。
  • 審査者・適判機関は、指摘事項に対する申請者の対応完了を確認し、建築基準法第93条に基づき消防同意に進む

⑥消防同意

  • 審査者は確認申請用CDE上にて所管消防署に同意を依頼する
  • 消防署は確認申請用CDE上で図面を確認し、電子申請受付システム上で同意通知書をアップロードする
  • 万が一消防同意に際して図書の補正が生じた場合は、申請者が確認申請用CDE上に再度データをアップロードする

⑦適合性判定・確認済証交付・図書保存

  • 消防署の指摘による図書の補正がない場合は、適判機関が最終的な適合性判定を行い通知書を交付する
  • 審査者は消防同意および適判通知書受領の後に、審査済図書に審査済であることを示す電子押印を行う
  • 同時に審査者は確認済証を紙で申請者に交付する
  • 申請者は電子押印済の審査済図書をダウンロードし、副本として保管する
  • 審査者は所定期間、審査済図書を電子申請受付システム上で保存する

⑧施工・工事監理・完了検査

  • 施工者および工事監理者は、電子押印された副本と、紙による確認申請書をもとに施工・工事監理を行う
  • 審査者は保存された審査済図書を用いて、完了検査を実施する
ポイント
BIM図面審査及びBIMデータ審査が開始されると、従来の建築確認申請と比べてシステム上にてペーパレスで行われる段階が増えるため、申請者・審査者どちらにとっても業務効率向上につながります。


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BIM建築確認申請・ソフト導入のメリット・デメリット

BIM建築確認申請・ソフト導入のメリット・デメリット

BIMデータによる建築確認申請が義務化される前にBIMソフトを業務に取り入れる場合、事前にそのメリットとデメリットを知っておくことが重要になります。

メリット

  • BIMソフトウェアの使用によって、整合性の高い申請図書を効率的に作成できる
  • 窓口に出向かず自社で申請や指摘事項へ対応できる(煩雑な申請作業の省略によって、作業時間の圧縮と人件費を削減)
  • 申請・審査・指摘のオンライン化や確認申請におけるルール策定、審査のマニュアル化によって、建築確認にかかる期間の短縮を見込める
  • 確認申請用CDEの構築によって、複数人による並行作業や遠隔拠点・テレワークでの作業が可能になる
  • 確認申請用CDEの活用によって、申請や指摘に係るコミュニケーションが円滑化する(コストと期間のロスが低減)
  • 建築・建設業界の2025年問題解消や働き方改革につながる


デメリット

  • BIM図面審査は、国土交通省によるシステム整備やルール・マニュアルの策定と並行して開始されるため、本格導入までの間に手順などが変わる可能性がある
  • BIMソフトの導入にコストがかかる(ソフト購入・環境整備・人材育成など)
  • セキュリティリスクが伴う(データ漏えい・不正アクセスなど)
  • 操作が難しく、独学だけで実務レベルまで技術を習得するのが難しい(時間がかかる)
  • 作業に慣れないうちは、クライアントへの提案スピードが遅れる可能性もある
  • 効率性を重視してBIMの既製モデルを寄せ集めると、自由なプランニングが難しい
  • 自社の業務内容に合わせたBIMソフトのプログラマビリティ(機能拡張・カスタマイズ)が必要

これらのデメリットにより、人材もコストも限られている中小規模の企業において、BIMの導入は大きなハードルと言わざるを得ません。

実際に、BIMに係る社員育成と通常業務の両立が難しく、いつCADからBIMに切り替えればいいかタイミングを見極められないというケースも多く見受けられます。

コスト面の障壁は建築BIM加速化事業などの補助金によって解消できるかもしれませんが、人手や作業時間を踏まえると、いきなりの全面導入はあまり現実的とは言えません。

ポイント
これからBIMを業務へ取り入れる場合は、「試行段階▶︎展開段階▶︎定着段階」とステップを踏んで導入する方法がおすすめです。

「日々の業務に追われてなかなかBIMの導入を進められない」という方は、まずBIMデータの作成を外注する“ミニマルスタート”から始めてみましょう。


▶︎おすすめコラム:「木造BIMとは|MAKE HOUSEが目指す業務フローの課題解決と実現に向けた開発ロードマップ


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株式会社MAKE HOUSEは、BIMを活用して以下のサービスを提供しております。

  • 2025年法改正に対応した「確認申請図書作成」
  • 建物運用段階まで活用できる「実施図面作成」
  • 3D化・視覚化によって施工不良や現場ロスを削減できる「設備図面作成」
  • 構造計画をモデル化によって情報化・可視化できる「構造計算」
  • 顧客への必要スペックの逆算提案もできる「省エネ計算」
  • 積算に活用できる「数量拾い」エクセルデータ作成
  • プレゼンに効果的な「3Dパースや360°VR、プロモーション動画」の作成
  • 木造プレカット「CADデータのBIMデータ化」

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BIMモデルの作成を外注し、特定プロジェクトから限定的に導入を開始することによって、リアルなデータを用いたスタッフ教育が可能となります。

また、早い段階でBIMの建築確認申請へ対応でき、義務化されるまでに社内フローをブラッシュアップできる点もポイントです。

弊社サービスによってBIMモデルを活用したプレゼンを行い、設計競技勝率を大幅に向上させた企業様も多数いらっしゃいます。

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BIM・3Dパースの事例


まとめ

BIMによる建築確認申請は2029年から本格始動します。

それに向けて、早めにBIMを業務へ取り入れましょう。

ただし、BIMを導入するにあたってコスト面や人材面におけるハードルは無視できません。

そこでおすすめするのが、本格的に導入する前に特定プロジェクトのBIMモデル作成をプロに任せる方法です。

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